はじめに

チベタンスパニエルは、公認犬としての歴史の浅さから、まだ世界的にダックスフンドやビーグル犬、日本犬などのように完全に固定された犬種とは言い難い。
イギリスではCC(チャレンジ・サーフィケイト)が授与されるようになったのは 1960年、アメリカAKCでノン・スポーティング犬種公認は1984年である。
まだ、公認純粋犬種としての歴史は50年程度である。
数千年の歴史を持つとされるチベタンスパニエルであるが、このように純粋犬としての歴史の浅さからタイプや質に大きなバラツキがあるのは経過として止むを得ないことである。現在、世界共通の犬種標準(スタンダード)が作成され、熱心な世界のブリーダーの努力によって改良が進み、急速に収束されつつある。

当犬舎としては、世界中のチベタンスパニエルを研究することによって、犬種標準を正しく理解し、日本人に適し、世界にも通用する十分な質のチベタンスパニエルを作出していくことを目標としている。

まず、当犬舎の繁殖に当たっては、より良いチベタンスパニエルを作ることを第一義とする。
経済的な利益を追うための繁殖はこれを一切しない。

では、良いチベタンスパニエルとは、何か?

犬種標準には、あくまで最低限のチベタンスパニエルと言う犬種はこのような犬である、という項目しか表示されていない。(広義のチベタンスパニエルと考えている)
当犬舎では、犬種標準より更に深く踏み込み 当犬舎なりの理想とする犬種標準に言及する必要があると考えている。(当犬舎独自の狭義のチベタンスパニエル)

以下に当犬舎の理想とする狭義のチベタンスパニエルを犬種標準の範囲で一部記載しておこう。
犬種標準を参照に見て頂ければ、当犬舎のチベタンスパニエルを理解して頂く参考となるだろう。
まず、野趣あふれた容姿を損なわずに、より洗練された上品な犬でなければならない。

一般外貌より
バランスが取れていることは、言い換えれば正しい骨格構成を持つことに他ならない。小さく活発で、敏活であるとは、必要で正しい筋肉と腱を持つことと理解する。重心が低く腰高であってはならない。

習性/性格より
健全な性格でなければならない。本来の番犬的な性格を失くす必要はないが、不要な無駄吠えをなくし飼い主には特段の愛情表現を示さなければならない。陽気で自信に満ちた堂々とした表情は特に重要である。

頭部より
第一に外観が下品であってはならない。卑しい表情を持つものは許されない。
おでこ中央にブッダマークと呼ばれる丸い班のあるものは極めて好ましいが稀である。
目縁、鼻は黒であり色抜けしているものは大きな欠点と考える。
目はオーバル(卵型)で狆のような大きな出目は品を欠く。
顔の斑は、薄汚れた感じのものや表情を覆うように見えるものは良くない。
歯列は必ずアンダーショット(受け口)であること。

頸(くび・ネック)より
適度に短くしっかりしていなければならない。ひょろっとした首は頼りない。
鬣(たてがみ)やショールなどの長い飾り毛は好ましい。

尾(テイル)より
尾付きは高く豊富な飾り毛(プルーム)があり、毛の長さはキ高まであることが好ましい。

足(フィート)より
ヘアー・フットである。指趾の間から足先を超える被毛は美しい。
前足の狼爪は取り除かれていても、あっても どちらでも構わない。
但し、後足の狼爪は必ず取り除くこと。

歩様(ゲート)より
スムーズで、特に後ろ足は十分な蹴りで推進力を誇示しなければならない。
充分なリーチを示すことが大切で、小股でチョコチョコと動く姿はこの犬種にふさわしくない。

被毛(コート)より
シルキーで柔らかく美しい被毛を持つこと。
平素の栄養状態の良さから生まれる全く自然な被毛であらねばならない。
トリミングはドッグショーに於いては失格にされるほどの減点行為とされ、この犬種では行ってはならない。顔のヒゲ、足先なども切ってはならず、自然を損なう一切の行為は許されない。
僅かにハサミが許されるのは、衛生面と事故予防のために足裏のパッド部分のみである。
AKCの犬種標準書には「ショー・リングでは、チベタンスパニエルは毛をふくらませたり分けたり形にはめたりせず、自然なままの被毛で変わらない状態で見せることが必要である。トリミング、クリッピングか、人工的な手段で被毛を変えたものは、展覧会から退去させられるほど厳しく罰せられる」と明記されている。
シーズーのように背中で被毛を分けるとか、ハサミで毛を整えたり、逆毛で被毛を豊かに見せる行為は度を過ぎた演出であり笑止に値する。

毛色(カラー)より
チョコレート、レバー色以外は全ての色、ミックスが許容されるが、あくまで犬種許容の範囲であって、全体のカラー・バランスは美しくなければならない。
所謂、面ズレや薄ちゃけた班、美観を損ねる細かい班は好ましくない。
特にショードッグにおいては、当犬舎に於いては出陳に値しないと考える。

他・・・
チベタンスパニエルは”Shake and Show Dog”=犬をシャカシャカ振って埃を落とすだけでドッグショーに出られる犬と言われるほどですが、言い換えればそれだけ「素」あるいは「素材」の素晴らしさが求められる犬種であると言えよう。グルーミングやトリミングを一切しないで今風に言えばシャンプーだけの状態で堂々とショーリングを闊歩できるだけの犬質の高さが問われるシビアな犬種だと言える。
日常の被毛の手入れ、運動、食事などの総ての管理が行き届いてこそ、素晴らしいチベタンスパニエルが完成する。
これは、ショードッグならずとも一般家庭犬としても同様である。

おおまかには以上であるが、細部まで当犬舎としてのチベタンスパニエルとしての理想規定を作成し、性格の良い、犬質が高く、健康なチベタンスパニエルを作出すべく努力している。
チベタンスパニエルは長毛小型愛玩犬である。近い将来、日本から多くのチベタンスパニエルが世界で活躍するであろう日を楽しみにしている。*上記は、当犬舎を知って頂くために限っての情報であり、他犬舎様と比べたり批評をするものではございません。 また、内容は順次加筆、改訂する場合がございます。

      2008年12月1日    森下 浩臣
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