チベタンスパニエルの選び方

■飼育目的
チベタンスパニエルを飼ってみようと決められた方に上手なチベタンスパニエルの選び方のヒントになれば幸いです。

まず、どの犬種でも同じかと思いますが「良い犬」が欲しいという希望をお持ちだと思います。
では、良い犬とは どのような犬を指すのでしょうか?
答えは、飼う人それぞれで飼育目的に合致した犬を選ぶことが大切です。

愛玩用の繁殖を目的としない家庭犬(いわゆるペット)なのか、将来繁殖をさせる考えがあるのか、ドッグショーに出陳させて勝ち負けを楽しんだり、チャンピオンのタイトルを狙いたいのか、それぞれに「良い犬」の内容は異なってきます。

それぞれの目的犬の特徴をみてみましょう。

ペットであれば犬種標準の細かい点を云々するよりも飼い主様と相性が良く合って、性格が可愛くて 健康で長生きが一番で、それ以上は望む必要は全く必要ないと思います。
犬の収得代金も良い血統を持つ犬でも比較的手頃な価格で入手できます。

しかし、繁殖目的の犬となりますと大きく様子が異なります。
私どもで、繁殖用の犬を求めるとすれば子犬でのお譲りは致しませんし、高価なものになります。
何故ならば、繁殖用に供せられる それなりに高い犬質が求められるからです。
性格性質はもちろんですが、犬種標準に照らして大きな欠点が無く、固定された長所を多く持つ他に遺伝疾患の諸検査にクリアした犬である必要があるからです。

子犬から、愛情込めて手間暇惜しまず一生懸命育てても、ペットとしてなら何ら問題がない小さな欠点や 既に同じタイプの実績のある繁殖犬が犬舎にいる為に自犬舎の繁殖犬として使うことを諦めなければならない場合が私どもでもあります。
そのような場合は非常に優れた犬ですが、ペットとして販売させて頂いております。
子犬ではなく若犬になりますが、丹精込めて育てた犬ですので素晴らしい犬質を兼備えたペットになります。
比較的手頃な価格でこのような優秀犬が入手出来ますし、ある程度犬質も固まっていますので このような犬が販売に出された場合には非常に有利に良質なチベタンスパニエルが入手できるチャンスだと思います。(数が少ないのが難点ですが・・・)
優秀な両親から生まれた子犬でも繁殖に使える犬はメス犬で10匹に1〜2匹程度しかいません。
オス犬ですと、もっと条件は厳しく単にチャンピオンのタイトルだけでは全くダメで、ずば抜けて優秀な素晴らしい長所の固定された犬でなければなりません。子犬100匹に対して1〜2匹でれば良い方です。
特にオス犬の場合は、ちょっと良い程度で繁殖に使うべきではありません。
メス犬の場合は、一生涯に数匹から数十匹以内の子犬が得られるのに対して、オス犬の場合は何倍もの子犬が得られる訳でそれだけ良くも悪くも影響力が大きいからです。

余談ですが、チベタンスパニエルに限らず、今日の犬の乱繁殖と犬質低下の大きな原因は繁殖犬のレベルに達しないペットの犬を「可愛いから この犬の子が欲しい」というだけの理由で検査や準備をしないで無暗に繁殖させる自称ブリーダーが多いという理由があります。知人などにお譲りするなどの目的の限定的な繁殖なら大きな問題は無いと思いますが、インターネットなどを通じて不特定多数の飼い主様に「販売」したり、ペットショップなどのチベタンスパニエルの知識の無い業者に「卸販売」することは遺伝疾患の蔓延だけにとどまらず、チベタンスパニエルのあるべき美点を崩し、犬質の低下させ新しいチベタンスパニエルの飼い主様の失望を招きかねない、とても憂慮すべきことだと考えています。また、プロでも犬種向上を目的としない子犬の繁殖販売を仕事としている繁殖屋が多いことも事実です。
どのような商品でもサービスでも同じですが、常識外れに安価なものに良いものはありませんし、素人がチベタンスパニエルのようなデリケートな犬種をブリードするのは とても難しいことだと思っております。

どのように繁殖するかは繁殖する側のモラルですが、この記事をお読み頂いた賢明な飼い主様には正しい見識をお持ちの上、購入するブリーダーなりショップなりをお選び頂きたく存じます。
しっかりした繁殖計画を持ち犬種の向上の為に日夜勉強と努力をしている真面目なブリーダーも数多くいらっしゃいますので、そのような繁殖家からチベタンスパニエルを入手出来れば将来に渡って大きな間違いはないでしょうし、当然愛犬の犬種情報や飼育相談も気持ち良く乗っていただける筈です。少々購入価格が高くても結果的にそちらの方が金銭的にもお得になること間違いないです。

純粋犬種のレベルを高く保ちながら維持していくには正しい犬種のあるべき姿を理解しているだけでなく、色々なタイプの同一犬種を持ち、遺伝学などの勉強も必要です。
チベタンスパニエルの繁殖は、手間も時間も経費もビックリするくらい必要です。
発情間隔も通常の小型犬が半年〜8か月に1回に対して、チベタンスパニエルの場合は個体差が大きく発情間隔が1年を超えるものも少なくありません。これは、メス犬1匹の生涯出産頭数が他犬種に比べると少ないことを意味し、ブリーダーとしての採算は非常に厳しいものがあります。
この採算性の低さが、専門犬舎が少ない大きな理由でもあります。
発情までの長い期間を、ただ時間的に過ごさせれば良いのか、手間暇かけてコンディションを整えて精神的にも肉体的にも万全に過ごさせて、発情を迎えさせることが出来るかで当然生まれてくる子犬の質に大きな差が生まれることは申すまでもございません。

現在チベタンスパニエルのオーナー様でも まじめに繁殖を考える方は少なくとも発情が予想される遅くとも3か月前から専門家の助言を得ながら行うことが望ましいでしょう。

さて、ショードッグですが、これはもう一般の愛玩犬とは別物です。
犬質が非常に高く洗練されて、欠点を持たず、魅力的な犬です。
頭部、構成、歩様、被毛、気質などが抜群に優れた犬でドッグショーに於いて勝ち負けを争える強さを兼ね備えたスーパードッグです。
このような理想的な犬の魅力を充分に開花させショーリンクで華々しい活躍をさせて賞を競うことも楽しいものです。ペットでは得られないスリルと緊張感が味わえます。
但し、ショードッグは、その犬個体が素晴らしければOKで、血統や遺伝力の優秀さは関係ありません。
ドッグショー当日のコンディションと犬質の良さだけでの勝負ですので果たして繁殖犬として優れているかは全く別問題です。
性格もペットのように普段はベタベタ甘えません。プライドが高く ものおじしない大胆な性格が求められるからです。
また、日常管理も食事、運動、被毛のケアなど特別な注意を必要とします。
価値のあるショードッグは、価格も常識では考えられない程に高価なのが通常です。

以上、ペット、繁殖用犬、ショードッグと見ましたが、どの飼育目的にもピッタリと合う理想犬はまずいないと言えましょう。
中途半端に普段はペットで、ドッグショーにも出して繁殖もしてみたい・・・と狙うより、自分の生活スタイルに合った目的のチベタンスパニエルを選ばれるのが一番でしょう。

また、ペットとして飼育したい方が無理して繁殖犬やショードッグを入手してもあまり価値のないことだと思います。
高価なばかりでなく、維持にも大変なお金がかかりますし 目的に反した犬を買ってもその犬の本来の魅力を充分に引き出すこともできません。それで、犬も飼い主も本当に幸せでしょうか?

ショードッグをペットとして飼ってもそれこそ「ショーがありません(笑)」結果になります。
ドッグショーで自分の愛犬が勝ち負けを競うことも確かに魅力的ですが、自分の愛犬の出身犬舎の代表犬がショーリングで活躍する姿を愛犬とともにドッグショー会場で応援するのも とても楽しいものですよ。

ペットとして適正な価格と質の犬を飼って、ショーに出陳するお金で可愛い服を着せてあげたり、 チベタンスパニエルの遊ぶオモチャでも買ってあげたほうが犬も喜びますし、飼い主としても幸福かと私たちは思います。


■ オス? メス?
チベタンスパニエルを飼う場合にもオス、メスの性別で迷われる方も多いと思います。
ここでは、それぞれの違いを述べます。

まず、オス犬の長所と短所をみてみましょう。

長所
・ほとんどの他の犬種と同じようにチベタンスパニエルもオス犬は犬質が同等であれば、メス犬よりオス犬の方が美しく 被毛も長く 立派で犬種の美点をより多く表します。
・愛玩、鑑賞、ペットして最適です。犬質抜群の犬は安定してドッグショーに出陳できます。
・発情などの煩わしさがありません。

短所
・種雄として通用する犬質に満たないものは直子を得られる機会が少なく、また繁殖させるべきではありません。(犬自身にとって不幸なことでは全くありません)
・すぐれた種雄以上の犬質の「成犬」を購入することは難しく、また入手できても非常に高価です。
・室内でのマーキング(オシッコのひっかけ)問題を言われる方がいらっしゃいますが、トイレのしつけさえ出来ていれば問題はないようです。
・またオス犬の方がメス犬に比べて体臭がきついなどと言われる方もいらっしゃいますが、日常のブラッシングなどのケアをキチンとなされていれば体臭が気になることは全くありません。チベタンスパニエルでは、この話は俗説だと私は思います。

では、メス犬の長所、短所をみてみましょう。

長所
・メスらしい独特の優しさがある。
・血統が良い問題のないメス犬ならオスほどに優秀でなくても繁殖の機会が得られる。

短所
・発情、妊娠、出産という出血や匂いなどメス犬ならではの問題がある。
・犬質抜群でも発情妊娠出産育児期間は、ドッグショーの出陳はできない他、ドッグカフェ、ドッグランへの立ち入りもマナー上できない。
もちろん不妊手術を受ければ、この問題は解決しますし子宮の病気にも掛る心配は消えます。

簡単に列記しましたが、オス犬、メス犬のどちらが優れているということはありません。
性別には一長一短がございます。
いつも傍において、いつでもどこでも一緒に行動したいならオス犬の方が安定していますし、メス犬の優しさを重視するといった見方もあるでしょう。

チベタンスパニエルのような、日本に於いてまだまだ十分な頭数がいない犬種では改良繁殖も素人では難しく、このことを知らない方たちが多く、知り合いのチベタンスパニエルのオス犬(メス犬)と交配して気軽に子犬を得ようとする方が見受けられます。
両親の血統や犬質を無視した繁殖はチベタンスパニエルにとっては非常に危険です。
将来繁殖を考えてメス犬の子犬を選択して愛育される方も、実際にそのメス犬が成犬になって十分な繁殖犬としての資質を備えていないと判明したならば、不妊手術を受けるなどの覚悟を持って飼育する必要があることを付け加えさせていただきます。
このことは、子犬の時点での判別は無理で、繁殖用としての資質を保証した子犬の販売はどんな専門家でも絶対に無理です。
もし、最悪 発情がこない等の問題犬であった場合、私達でも責任は持てません。
犬種に限らず、確実な繁殖用のメス犬が欲しい場合は、検査を受けてクリアした成犬を購入するしか方法はないとお考え頂きたく存じます。その場合、メス犬の所有者が本来「得べかりし利益」を譲渡するわけですから、相当高価になることは否めません。


■子犬?成犬?
チベタンスパニエルを求める時に子犬にするか若犬または成犬にするかの問題もあります
ね。
日本では、犬を飼うとなれば ほとんどの方が子犬から飼いたいと言われます。
理由は、第一に子犬時代は特に可愛いこと、早く新しい環境に慣れること、などが挙げられています。
確かに生後2~3か月齢の子犬はとても可愛く無邪気で人懐っこいです。
その代りに、しつけ、健康管理に手間がかかり、また犬質の良否も定かではありません。
私たちチベタンスパニエルを専門に取り扱っているものでも、正確な優秀さは判定出来かねます。
生後2~3か月時に体高と体長のバランスが一時的に整う時期がありますが、これも成長期間中に大きく変化しますし、チベタンスパニエルは2歳程度までは被毛の色も変化します。
インターネットなどの広告でこの幼犬時期の子犬で「ショータイプ」などと書かれているものがありますが、2~3か月齢の子犬で正確な犬質の判断はプロでも絶対に不可能です。明らかな誇大広告と存じますが、販売価格がペット価格で出されていますのでご愛敬というところでしょうか(笑)。
犬質が、ほぼ見極められるのは、生後少なくても9か月齢を超えて若犬となってからです。
繁殖やショードッグを考えておられる方なら9か月齢以降の若犬や成犬を求めれば、犬の価格は高価ですがリスクは最小限で済むでしょう。
ブリーダーなり犬の販売者に、繁殖目的である、ショーに出陳する、とハッキリ目的を告げて入手することも大切だと思います。
欧米では、「良い犬」を求める愛犬家は生後9か月以降の若犬を求めることが多く、また子犬販売よりも若犬や成犬販売に力を入れているブリーダーが多くいらっしゃいます。
日本では9か月齢を超えた若犬を求める方が一部の大型犬愛好者を除き、まだまだ少なくマーケットも確立されていません。
ブリーダーが犬質をしばらく見定めるために販売を遅らせていた犬と いわゆるペットショップなどの「売れ残り犬」が同じレベルで評価されている現状をとても悲しく思います。
ただ、販売を遅らせていた犬と売れ残りの犬を見分けるのは簡単です。
前者は、健全で犬質が良く見た目に美しく歩様もしっかりしています。それに対して後者は毛ツヤが悪く、生き生きとした活力がありません。写真を見るだけでもその違いは一目瞭然です。
そういった次第で日本の犬文化の現状が子犬第一主義のマーケットであることを理解しながらも、今後生後5か月以降の幼犬、あるいは9か月以降の若犬の市場も発展していくことを期待しています。
現状ではチベタンスパニエルを入手するには、子犬で求めるのが普通でしょう。
しかし、生後何か月齢までと決めずに自分に合ったチベタンスパニエルをじっくりお探しすることをお薦め致します。


■その他、犬を選ぶ重要な基本
まだまだチベタンスパニエルを選ぶ基準はそれぞれにあると思いますが基本的には次のことを充分踏まえて選んでいただければ良いでしょう。
健全であること。
健康なこと。
性格、気質が良いこと。
チベタンスパニエルの容姿と性格を出来るだけ正しく持っていること。
飼育目的に合致した犬であること。
飼い主様が、一生その犬の世話ができること。
これらを満たしていることが何より重要です。
犬は工業製品ではなく生き物ですので途中で飼育を放棄できません。
愛情をたっぷりかけて躾けをし、十分な食事と運動、外気浴と清潔な環境を必要とします。
怪我や病気にもなることもあるでしょうし、犬の老後の面倒も思ったより大変かもしれません。
チベタンスパニエルを飼う前に、飼い続けることができるか もう一度自分自身に訊ねてみることも重要です。